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墾田永年私財法

■賃貸住宅の原状回復について、貸す側の知恵をつけたいまの自分が退去者ならば、どうするだろうかという話。

 

業者「あなたはここに判を押している。原状回復工事の費用内訳について、了解しているということになる」

私「確かに私は入居時にその契約内容で署名捺印したし、自分がこれこれの費用を負担するということについて異論を唱えることはしない。しかしそれは、その費用が客観的、合理的な金額であることが前提だ。高すぎると思われる金額については、まったく別個の問題になる」

業者「金額は相場に基づいたものだ」

私「先日、私は専門業者に見積もりをしてもらった。これがその見積書だが、あなたのいう金額との間には大きな開きがある。納得できない」

業者「当社が委託するリフォーム業者は、高品質の素材を使用する」

私「入居時と同質同等の造作を復元するのが原状回復工事であり、それ以上の機能を付加する工事は改良にあたる。民法ないしガイドラインによれば、改良のための費用は家主が負担すべき性質のものだ。また契約書には、リフォーム業者は当社指定の業者とする旨、強制されているが、これは優越的地位の濫用にあたるのでないか。私はひどく困惑している」

業者「あなたは原状回復工事の費用を払わないということか」

私「払わないとはいっていない。客観的、合理的な金額であれば、もちろん払う」

業者「客観的、合理的な金額だ」

私「ところでエアコンは残置するから、原状回復費用の一部と相殺していただきたい」

業者「費用償還請求権は契約書で排除されており、相殺できない」

私「新居にはエアコンがあるから、私にとってこれは無用の長物だ。相殺されないなら、はずした上で捨てることになるので、私は取り外し処分費用で損をする。物件価値は落ちて家主も損をする。自前でエアコンを取り付けることとなる入居者も損をする。むろん地球環境にもよくない。しかし相殺されるなら、私も家主も、入居者も地球も得をする。どちらが好ましいかは明らかだ」

業者「……。エアコンは残していただいてかまわない。しかし相殺はできない」

私「あなた、それじゃあ話が前に進まない。私は提案をしているのだから、あなたも聞く耳を持っていただかなければ困る。そもそもこのガイドラインはなぜ生まれたのか、契約書の内容を四角四面に適用して、もめ事が星の数ほど起こったから、このガイドラインができたんだ、そうだろう。契約書にこうある、各条項に疑義が生じた場合は甲乙誠意をもって協議すると。いま私は疑義を述べている、基礎となる借り手と貸し手の負担割合は妥当か、工事金額が不明瞭である場合はいかにすべきか、あなたは私と協議をしなくちゃあいけない」

業者「整理すると、負担割合および金額にご納得いただけていない」

私「そうだ。このガイドラインと見積書についてはコピーをお渡しするから、再度検討していただきたい」

業者「おそらく回答はいまと変わらない。ご納得いただけない場合は、法的な手続きになると思う」

私「法律家は、開口一番、和解を勧めるだろう。それをいまやるだけの話だ。私は払うといっている、あなた方はどうするのか」

業者「……。持ち帰って検討する」

 

借地借家法でもっとゴネでもいいけど、穏便にやるならこんな感じか。「払わない」でなく、「払いたくない、金額が妥当なら進んで払いたい」といえば、貸す側は折れるしかなくなる。面倒な退去者にいちいち付き合うほど、家主も暇じゃない。

個人的には、もう八割がた決まってる新居の仲介に割り込ませてやるってことで、退去物件の不動産業者を丸め込むような手も思いつくけど、そこまでこざかしい退去者の話は、まだきいたことないね。

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